
背景
近年、オペレーショナルレジリエンス(業務の強靭性・復旧力)が強く求められるようになった背景には、社会環境の変化、従来の事業継続計画(BCP)の限界に加え、「利用者中心主義」という重要な視点の転換があります。
現代社会はデジタル化とシステムの複雑化が進み、ITへの依存度が極めて高まっています。
その一方で、サイバー攻撃や自然災害など、企業が直面するリスクは多様化・高度化しています。
このような状況下では、従来のBCPが前提とする「特定のシナリオを想定し、いかに中断を防ぐか」というアプローチだけでは、想定外の事態に対応しきれないという限界が露呈しました。
この課題を解決する上で鍵となるのが、オペレーショナルレジリエンスが持つ「利用者中心主義」の視点です。
従来のBCPは、供給者側の視点、例えば「自社ビルが使えなくなった場合の対応」といった内部資産の保全に重点が置かれがちでした。
オペレーショナルレジリエンスは、「決済や送金が止まったら利用者が困る」というように、利用者や社会への影響度を最優先に考え、本当に守るべき「重要な業務」を定義します。
🔷まとめ
オペレーショナルレジリエンスは、「業務の中断は起こりうる」という前提に立ち、利用者が期待する重要なサービスをいかに途切れさせず、迅速に復旧させるかに焦点を当てた概念です。
この利用者視点の導入により、組織は社会的な機能を果たす能力を明確に定義し、より実効性の高い対策を講じることが可能になります。
金融庁をはじめとする規制当局もこの利用者保護の観点を重視しており、金融機関には顧客への影響を最小限に抑えるための実務構築が求められています。
運用課題
オペレーショナルレジリエンス管理に関連して取り扱うべき情報量が膨大となってきており、従来のExcelなどを利用した管理方法では限界に達しておりました。
さらに、情報の変更管理プロセスがボトルネックとなり、各業務所管部署でのタイムリーな情報活用が困難な状況にありました。具体的には、以下の2点が主要な課題となります。
保有・管理すべき情報が加速度的に増加しており、ExcelやPPTの肥大化や複数ファイルにわたる分散管理が常態化しておりました。
これにより、情報の検索、集計、整合性の確認に多大な工数と時間を要します。
また、手作業による人為的なミスのリスクも高まっていました。
情報の変更や更新を行う際、業務所管部門が直接ドキュメントファイルを編集するのではなく、管理部門が変更管理を行った上でドキュメントファイルへ反映するプロセスを経ています。
このため、変更申請からドキュメントファイルへの反映までに時間的なギャップが生じ、結果として、業務所管部門は常に最新の情報に基づいて業務を遂行することが難しく、生産性の低下や迅速な意思決定の妨げとなっておりました。
これらの課題を解決するために、膨大な情報を一元管理し、各業務所管部門が適切な権限の下で直接、かつタイムリーに情報を更新・共有が可能なServiceNowオペレーショナルレジリエンスの導入が推進され、業務効率の向上、データ品質の確保、そしてリアルタイムな情報に基づいた迅速な意思決定を可能とするシステム構築を行う方針となりました。
導入効果
システム導入により、従来の運用課題を解決し、以下の具体的な効果を実現しました。
従来のExcel管理や分散管理を廃止し、ServiceNow上でオペレーショナルレジリエンス関連情報を一元管理しました。
これにより、情報の検索性・信頼性が飛躍的に向上しただけでなく、各業務所管部門が必要な情報をタイムリーに最新の状態に更新可能となりました。
常に最新かつ正確な情報に基づいた業務遂行が実現されています。
検証結果や問題の対応状況などを自動的に集計し、ダッシュボードでリアルタイムに可視化しました。
これにより、管理部門や各業務所管部の関係者がいつでも全体の進捗状況や問題を正確に把握できるようになり、迅速な意思決定を強力にサポートしています。
ServiceNowを共通のプラットフォーム(ハブ)として利用することで、同一プラットフォーム内の別プロダクトや外部システムとの連携が容易になりました。
これにより、部門横断的なデータの利活用が促進され、業務効率化が図られています。
管理部門から業務所管部門への情報更新依頼や、更新内容に対する承認フローをServiceNow上で設定・自動化しました。
これにより、変更管理のプロセスが標準化・効率化され、必要な統制を確保しつつ、情報更新のタイムラグや管理負荷を大幅に削減しました。
これらの導入効果を通じて、組織全体のオペレーショナル・レジリエンスが大幅に強化され、ビジネスの中断リスクを最小限に抑える体制を構築することが可能となりました。
Relation
Contact
事例の詳細やサービスに関するお問い合わせはこちら